PTSD

概要

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)とは強い心的外傷体験、死に直面するような出来事(事故や暴力)や性的暴力によって生じる心的障害を指す。アメリカではレイプによるものが最も多く、日本ではいじめによるものが多いとされている。こうした突発的なものだけでなく、幼少期からの虐待や育児放棄(ネグレクト)など、家族環境の問題や長期間外傷を受けるなどによってもPTSD症状が現れることが明らかになっている。これらは複雑性PTSDと呼ばれ、先述したPTSDとは区別されることもある。

症状

追体験
 別名をフラッシュバックと言い、突如としてトラウマに関する記憶が様々な感覚を伴って強烈に蘇り、更にそれが繰り返し生じる。心的外傷体験時と同様の環境、もしくは精神状態の際にも症状が喚起される。
認知・気分の否定的変化
物事に対する興味・関心の消失や配偶者や恋人、家族との関係が疎遠になったりする。出来事について自責的、他責的に考えてしまうといった認知の歪みが生じる。(外傷体験によってそうした不適応的な認知的スキーマが確定される)
覚醒と反応性の変化
PTSDの特徴的症状の一つである睡眠障害はこの過覚醒からくるものである。イライラしたり、人や物に対して怒りをぶつけることを指す。これにより周囲からの情緒的サポートを受けづらくなってしまう。
回避
追体験や過覚醒が生じないよう、外傷体験に関連する環境を避けること。外傷体験について想起させる場所を避けるといった物理的な回避の他、そうしたことを話すこと、似たような感覚を避けるといったことも多い。当時流行していた曲を聞くことなど様々なものが苦痛となり、回避対象となりうる。

上記の症状が外傷体験から一ヶ月続く場合PTSDと診断され、一ヶ月に満たない場合ASD(Acute Stress Disorder:急性ストレス障害)と診断される。

治療

EMDR、暴露療法、箱庭療法、認知行動療法など。

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うつ

概要
 ほぼ一日中気分の落ち込みだけでなく、いつも楽しめていたものが楽しめなくなったり、やること全てに意味が見いだせなくなったり、毎日無価値感をもったり、不適切な罪悪感を抱いたりといった症状を呈する。症状には日内変動があり、朝より夕方の方が気分が良く、甘えであるという誤解を招く一因である。
DSM-5においては抑うつ症候群として重篤気分調節症、うつ病、持続性抑うつ障害、月経前不快気分障害、物質・医薬品誘発性抑うつ障害、他の医学的疾患による抑うつ障害などが挙げられている。

症状

 
側面 心理面 身体面
症状 罪業妄想 体重の増減
貧困妄想 過眠や睡眠不足などの睡眠障害
心悸妄想 易疲労性
焦燥感 思考力や集中力の減退

仮面うつ病
気分の落ち込みや悲しさなどの心の動きを自覚することができなかったり、それをことばで表現できない場合、身体症状が主に語られることになる。これが「仮面うつ病」と呼ばれ、疲れやすさや体の痛み、吐き気、不眠などの身体症状を主に訴えて内科を受診することも多いが、生理学的な以上は見られず心療内科へと送られるケースが非常に多い。

疫学
うつ病の生涯有病率は10%に上り、10人に1人が罹患する。中でも青年期、成人期の女性においては男性の約2倍である。さらに、全体の約15%が自殺をすると言われているため治療の重要性は高い。好発年齢は20代前後であり、3分の2は完治するが残りの3分の1は部分的あるいはまったく治癒しないことが知られている。適切な治療を受ければ半数以上は半年以内に改善する。しかし、寛解から半数は2年以内に再発し、うつ病エピソードを繰り返し体験するほど再発の可能性が高くなっていく。

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対象喪失

定義

① 愛情や依存対象の喪失(死別や失恋、離婚など)
② 住み慣れた社会的・人間的環境や役割からの別れ(引っ越しや転勤、結婚、進学など)
③ 自分の精神的拠り所となるような自己を一体化させていた理想や会社、自己価値の低下


概要

このような対象喪失に伴う悲哀の心理的過程は悲哀の仕事(morning work)と呼ばれる。
これは喪の作業とも呼ばれ、この過程を経ることで失った対象から脱愛着し、新しい対象を求めることが可能となるとされる。人間は対象喪失により一時的に外界への興味を失い、悲嘆と失ったものへの追想に没頭する。そのため、メランコリーと似た症状を呈するが、メランコリーの場合これに加え自我が失われた対象に同一化し、自我喪失へと変化していく。それにより現実検討能力が失われることが特徴。

クラインによる対象喪失理論

クラインは人生で悲嘆を体験する時には幼児期早期の悲哀の体験が常に甦っているとした。つまり、喪の作業の本質は償いを行うことによる抑うつポジションの復活とその克服である。この抑うつポジションを幼児期にどの程度克服しえたかが後の対象喪失をめぐる体験に深くかかわってくるとした。

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ストレス理論

セリエのストレス理論

汎適応症候群 ・・・ セリエの提唱したストレスによってもたらされた身体反応を指す。
人間はストレスを受けた際、警告反応期に入り、心的負担に対して抵抗力を増していき、高い抵抗力を維持し、緊張を持続する抵抗期に入る。この間に問題が解決すれば抵抗力は下がっていき、平常時に戻る。しかし、解決されない場合抵抗力は維持され続ける。そして緊張の持続に耐えられなくなったとき、抵抗力が急激に低下する疲憊期(疲労期)へと突入する。

ラザルスの認知的評価モデル

ラザルスはストレッサーに対して脅威と感じ、それに対処できない場合にストレスが生じるとした。つまり、ストレッサーに対して脅威を感じてもそれに対処することができればストレスは生じないこと示した。

このストレスに対する対処はストレス・コーピングと言われ、これを2つに大別した。問題を直接解決する問題焦点型コーピングと気晴らしや苦痛の軽減しようとする情緒焦点型コーピングである。
(このコーピング方法が異なるために対人関係におけるトラブルが発生することもままある話です) 

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対象関係論

概要

クラインを中心とした理論であり、生後すぐの幼児がどのように母親との関連性を構築していくかを示した理論。クラインは口愛期や男根期といった発達段階とは別に態度(Position)という概念を示し、人は生涯にわたり「妄想・分裂ポジション」と「抑うつポジション」を繰り返していくとした。

態度(Position)

妄想・分裂ポジション : 分裂や投影性同一視を中心とした対象関係が特徴。
抑うつポジション : 分裂していた対象が統合され、対象を攻撃していた自分を認識する。それにより罪悪感と両価性が体験される。


記述練習

対象関係論とはクラインを中心として発達した理論である。ポジションという概念を見出し、「妄想・分裂ポジション」と「抑うつポジション」の2つの状態を行き来するとした。また、それまでの精神分析においてはエディプス・コンプレックスの葛藤を経るまでは親との対象関係が形成されておらず、精神分析的解釈は意味をなさないとされていた。しかし、クラインは遊びを通して子どもと接する過程でそれ以前の子どもも対象関係が形成されていることを見出した。

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チック症

概要

チック症は様々な不随意運動が引き起こされる疾患である。その要因からは器質性チック心因性チックに分けられ、症状からは身体運動性チック呼吸性チックに分けられる。男性に圧倒的に多く、女性はあまり見られない。

症状

身体性チックではまばたきや顔をしかめるといったあまり目立たないものから、ジャンプする、片足を引きずるといった大きな動作が見られる場合もある。
呼吸性チックでは咳払い、鼻を鳴らす、自分の言葉を繰り返すといったものから卑猥な言葉や「馬鹿、死ね」といった言葉をいう、奇声を発するといったものまで見られる場合もある。
こうしたチック症の症状が重度になるとトゥレット症候群と診断される。トゥレット症候群は運動性・呼吸性を問わず様々なチック症状が一日中、それも頻繁に生じ、それが3か月以上持続して見られるものを指す。合併症としてADHDや強迫症などが見られることも多く、こうした点にも注意が必要である。

治療

薬物療法としてはドーパミン受容を遮断することを目的としてリスパダールが投与されることが多い。そのほかにもセレネースやオーラップなども用いられる。
心理療法としては条件静止法が用いられることが多い。これは問題となる行動(まばたきなど)を積極的に行わせ、休憩させるというサイクルを繰り返すことでその行動の出現を抑える治療である。

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統合失調症(文章化)

100人に1人が罹患する精神疾患であり、その性差はほとんど認められない。
症状としては陽性症状と陰性症状とに二分するものと、妄想型、解体型、緊張型の三つに大別するものがある。

陽性症状とは幻覚や妄想といった症状を指し、陰性症状とは感情鈍麻や自閉性といった症状を指す。

妄想型は妄想や幻覚を主たる症状とし、感情麻痺や自閉性などはあまり認められない。その他の病型に比して人格水準は保たれ、予後はよい。好発年齢は30歳前後である。
解体型はブロイラーの基本症状である感情障害や自閉、連合弛緩といった症状が主であり、幻覚や妄想はあまり認められない。発症が緩やかであるため気付かれにくく、理由のはっきりしない欠席などから始まることが多い。好発年齢は10代後半から20代であり、予後は悪い。
緊張型は精神運動興奮といった緊張病的症状を中心とした意欲や行動面の異常を呈する。症状の憎悪を反復する周期的な荊軻を辿るので症状が消えている間はほぼ健康な状態に戻るとされている。
これらの症状に対する治療は、生物学的要因がほぼ確実であることから薬物療法が不可欠とされる。陽性症状に対しては副作用が少ないことからリスペリドンが主に用いられる。(その他の薬物の副作用が強いということを指し示すものではない)
心理療法としては認知行動療法や芸術療法が用いられる。ただし、急性期における患者に対しての箱庭療法は禁忌であり、十分な注意と臨床経験を要するものである。

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知能検査

知能検査の始まりはビネーによって開発された知能検査であり、当時の子供たちの知的発達の遅れを測るために開発されたものであった。それがスタンフォード・ビネー式知能検査に発展していき、実用化されるようになった。
しかし、問題点を多く抱えたビネー式知能検査はウェクスラーの開発したウェクスラー式知能検査によりあまり用いられなくなった。この知能検査は動作性IQの導入や個人内での知能の比較が可能となった点、大量標本によりなされた標準化、そして偏差性知能が測定可能になった点が特徴である。

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心理学と客観

しばしば箱庭は客観的でなく、確固たるエビデンスがない。そのため、疑惑を持たれることも多いが、そんな形あるものにしか意味を見いだせなくなってしまっては人間という複雑な世界を理解できるだろうか…

と、おっしゃる方がいらっしゃいますが、まずその効果を研究してその効果が実証された治療法でなければ一人の人間、一つの人生を送るクライエントに自信を持って提供できるのかと思います。

私自身、箱庭の効果は認めていて非常に良い治療法だと思っていますが客観的な指標での研究を毛嫌いしていては社会に認められないのです。そうして頑なになってしまった態度こそ人間理解の妨げになるものだと、私は思っています。

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創造的退行

自我による自我のための退行とも言われる。この退行により、自我が退行と回復を通して無意識よりエネルギーを得るとされ、これまで病的な心理機制とされてきた退行の肯定的側面の存在を示した。
芸術療法などにおいてこの退行を意図して引き起こし、治療に役立てる。

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